第77章 世界一の辛さ
「まあ、あなたたちの母親が父親を殺されたときに被害届出してますからそれで動きますけど。」
春風さんは意地悪くそう聞いた。
「あなたたち、本当にそれで納得するんですか?面白いほど素直じゃないですねぇ。」
「…」
「……」
思わず童男と私は顔を見合わせた。
「語っていきなさい。あなたたちはもう少し本音で話す必要がある。」
そう言って連れて行かれたのは……。
「春風、お前もう本当にクビになるぞ。」
「構いません。」
那由多のところだった。まさかの強制面会…。
でもまさか会えるとは思わなかったので、私はガラスに張り付いた。
「那由多!」
「…触っちゃダメだよ、それ。」
那由多に注意されて慌ててガラスから手を離した。
「那由多」
童男は私を制して初めて声を発した。
「お前のしたことは許せそうにない。」
「……」
「でも、一緒にいた時間は忘れられそうにないんだ。」
私はその横顔を盗み見た。
「待ってる、からって言ったら、また俺はお前の重荷になるか?」
童男は笑っていた。
「…俺はお前たちを重荷と思ったことはない。」
「そっか。じゃあ自信満々に待ってる。会社は任せてよ。」
………この2人の知らないところがまだまだある。私は、それを共有はできないけど。
「父さんのこと償って、それで出てきてよ。もう俺らのことはチャラでいいから。那由多が俺たちを重荷と思わないのなら、俺たちだって一緒だよ。」
童男はぽん、と私の肩に手を置いた。
「家族でしょ。」
「…私も?」
「うん。」
童男は続けた。
「こんなことになったけど、もう一回やり直そう。母さんが元気になったら父さんのお墓参りに行こう、ね?」
那由多は頷いた。
私もブンブン首を縦に振った。
間違ってもやり直せる。
壊れても人は立ち直れる。
間違ったからってそこで終わりじゃない。