第77章 世界一の辛さ
午後からは春風さんに警察署にくるようにと言われていたので出かけた。
実弥についてこられても困るので、適当に買い物してくると誤魔化した。
……もう、雰囲気さいあく。…謝らないといけないのはわかっているけど心の踏ん切りがつかないので何も言えない。
警察署に着くと部屋に入れられ、春風さんが向いに座った。
「わざわざご足労ありがとうございます。昨夜はよく眠れましたか?お怪我の具合は?」
春風さんはニコニコ笑っていていつも通り…。
すごいなこの人、隕石が落ちてきてもきっと笑っているんだろうな…。
「眠れました、具合もいいです。でももう疲れました」
「でしょうね。」
ニッコーと春風さんが笑う。
「だけどあなたが望んだことですよ。最後まで遂行してもらいますからね。」
そう言って春風さんは誰かを部屋に呼んだ。
入ってきたのは童男だった。
「こんにちは。会社の経営はうまくいってるみたいですね。」
「おかげさまで」
童男はチラリと私に視線を向けた後、私の隣に座った。
「はい、まあどうしてお呼びしたかはわかっているとは思いますが無事に霧雨那由多を捉えることができました。
あなた方の父親を殺した罪はもちろん、その他もろもろ…あなたたちを傷つけたことについても罪となりますから、これからどうしたいかを聞きたいのです。」
童男は黙っていた。私も話さなかった。
「…とはいえ、まああなたたちが今日に至るまで被害届も何もアクションを起こさないのでなんとなく想像はついていますが。」
春風さんがそう言い終わると、童男は口を開いた。
「もうどうでもいい。釈放するならそうして、死刑にするならさっさと終わらせてくれ。」
「さんは?」
私はどう答えようか悩み、しばらく間を開けた。
「その…罪を償うとなればどれくらい…」
「さあ。」
春風さんは答えない。多分、わかっていてあえて黙秘しているんだろう。
「わかりません。私はあの人にどうなってほしいとか、そういうのはないです。元気でいてくれればいいです。」
そう答えると、春風さんはにこりと笑った。