第77章 世界一の辛さ
家に帰るとおはぎが出迎えてくれて、しばらくわちゃわちゃ遊んだ。
実弥は何も話さなかった。
私もこれ以上何かを喋るつもりはなかったし、勝手にご飯を食べて勝手にお風呂に入った。
寝る時だけ声をかけた。
「今日リビングで寝る」
実弥はいつもみたいにクマをどかしていたが、ピタリと動きを止めた。
「なんで」
「1人がいい」
「……」
しばらく黙っていたが、実弥は首を横に振った。
「ねえ、やっぱり寝室別にしない?」
「却下」
結局その日は2人で寝て、朝も2人で起きた。
でも朝から大喧嘩しちゃった。
「なんで仕事休んだの!!行って来ればいいじゃん!!」
「昨日あんなことがあったのに仕事なんでできるか!!」
「だからっ!昨日のことは君に関係ないんだよ!!」
「あるっていってんだろ!!!」
「ないってば!!早く電話して休むの撤回してよ!!仕事行ってきてよ!!!」
私はなんでそんなに自分がムキになるのかわからないくらいキャンキャン怒鳴っていた。もうおはぎが隠れちゃうくらい朝から言い合いになった。
「いい加減にしろ」
最後は実弥がそう言った。
「いいか、俺はそう簡単に離れてやらねェからな。お前を見捨てたバカどもと一緒にすんじゃねぇぞ。」
私はまた言い返した。
「そうやって偉そうなこと言ってみんな私より先に死んでいったけど?」
実弥は驚いたように目を見開いた。
最後はそれで喧嘩は終わった。