第75章 怒ってます
家族ってなんだろう。
おじいちゃんとおばあちゃんも家族だよね。暖かくて好きだけど、私のお父さんとお母さんになってくれないし。
春風さんは優しいけど、兄さんじゃないし。
阿国は可愛いけど、妹じゃない。
陽明くんは頼りになるけど……あの子、一体なんて例えたら良いんだろうね。
代わりはいない。
この世には誰1人として誰かの代わりになんてなれない。
そんなのもう死にたくなるほど理解してる。
『私は家族が欲しい』
理解してるから。
『“ホンモノ”の家族が欲しい』
偽物は、ちょっと嫌かな。
『那由多と童男がどんなクソ野郎でも善人だろうとも別にいい。』
「いけません」
『殺人犯だろうがなんだろうが「いけません!!!!!」』
春風さんが怒鳴る。
「それ以上は許しません、いくらあなただろうと!!!知らない方が幸せなこともある、知らないことが賢い選択だ!!!隠し事の何が悪い!!!!!」
彼はついに勢い良くテーブルを叩き、カップを倒した。中に入っていた液体がバシャンと落ちた。
「あなたを守ることの何が悪い!!!!!!!!」
私は家族が嫌いだ。
一度は突き放した。一緒に暮らせないと両親から離れた。それなのに今更家族が欲しいと嘆いているのは、私がどうしようもないバカだから。
『私は守られないといけない子供じゃないです』
ずっとずっと、愛されたかった。無償の愛が欲しかった。見返りのない愛が欲しかった。
愛を知りたい。
家族を知りたい。
そしてそれを、生まれてくる我が子に教えたい。
春風さんは冷静になったのか、力が抜けたように椅子の背もたれに寄りかかった。
「……帰ってください、もう話すことはない。」
『でもッ』
「わからないんですか」
春風さんはまたテーブルを叩いた。倒れたカップが動き、ついには落ちて割れた。