第74章 な ん て ね
私は肩を落とした。
………帰ろう。
これ以上ここにいても私ができることはない。
立ち上がった時、実弥がきた方向から春風さんと童男が歩いてきた。
「こんにちは」
慌てて実弥と一緒に春風さんに頭を下げた。…今日は警察の制服を着ていた。なんか、新鮮…ドラマでしか見たことないやつだ。
「那由多がさんに会いたいと言っています。」
「ッ!」
「どうするかは実弥くんが決めてください。」
またとないチャンスに私は身を乗り出したが、春風さんの最後の言葉で大人しく立ちどまった。
…うん。
実弥が許可するはずないよね。
「だけなんですか」
「はい、童男さんには会いたくないそうです。」
春風さんの笑顔に童男は顔をしかめる。…わかるよ。春風さん、こういうことはっきり言うから…。
「それでどうしますか、実弥くん。」
春風さんはにこおっと笑う。
…これは。
うんって言わない方がいいパターン。
これだと何があっても全責任は実弥にあるみたいなこと言ってるのと同じだよ。脅しだよ。さすがだよ春風さん!!!
「…今日は帰ります。」
「そうですか。懸命な判断です。」
こちらに判断を委ねておきながらそんなことを言うなんて…。
「さん」
春風さんは急に笑うのをやめた。
「霧雨那由多について思い出したことがあればすぐに連絡をくださいね。」
その後、私と実弥はさっさと警察署を後にした。
……春風さん、何が言いたかったのか。私が那由多について何か知っていると思っていたのだろうか?
…ていうか、あの人……。
ま
さ
か
一つの可能性が頭に浮かんだ。
ああ、そうか。それならなんとなく…。
そうだそうだ。あの人は、春風さんは……。
帰りの車の中は心ここに在らずだったけど、家に帰ってからおはぎの相手をしたりしているうちにだんだん正常に戻っていった。
(イヤ阿呆か私はっ)
普通に日常楽しんでる場合じゃないわっ!!もっと考えたりすることあるのにー!!クソがッ!!
何かしたら怒られるけど何もしなくてもこうなるのかよ世の中理不尽だな!!!