第74章 な ん て ね
空気が完全に固まった。
「………」
私は耐えられなくて、その場から離れた。
「おい」
実弥は怒ったように言ったけど、限界だった私は寝室に飛び込んだ。実弥は追いかけてきて、私はベッドの布団に頭からすっぽりくるまった。
「そうやって…逃げるのやめろ!」
実弥は布団を引っ張った。私はポロポロ泣いて首をいやいや振って抵抗した。
「話すことないー!!もう無理ーー!!」
「怒ってねえよ!!怒ってねえから!!!」
「イヤダァーー!!」
一気に布団を奪い取って巻き寿司みたいにくるまった。
実弥ははあはあ方で息をしていたが、巻き寿司になった私に覆い被さった。…あ、体重はもちろんかかってなかったけど。
「わかった。寝よう。全部明日にしよう。な?」
「……サネミ、シゴト」
「…明日休みだよ。忘れたのかァ。」
…ソウデシタネ。
寝室の壁にかかるカレンダーがそれを静かに語っていた。
「…布団俺にも分けてくれ。寒い。今日はもうこのまま寝る。」
「………ワカッタ」
私は巻き寿司をやめて半分実弥に布団を分けた。
「……ネムレナイ」
「泣くからだ、阿呆」
「ウン、ジャア、ネムラナイ」
私はぱっちり目を開けていたが、実弥がぽんぽん、と私の頭を叩いた。
「目だけ閉じてろ。」
そう言われて目を閉じた。
その後、私はよほど疲れていたのか実弥よりも早く眠りについた。