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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第72章 “本当の記憶”


『藤?』


…暗闇に海に桜に藤……やかましい夢だな。


『あ、精神の核だ』

『100円玉みたいに落ちてるわね…』


陽明くんが地面に落ちていたそれを拾い上げた。

あたり一面藤の木で、綺麗に花が咲いていた。


『うわあ、すごいなあ。神社も季節になるとこうなるんですよ。』

『へえ…それなら今年は見にいってみようかな。』


陽明くんは精神の核を私に差し出した。


『正真正銘、ここがゴールみたいですね。』

『うん、多分そうだね。ずいぶん長い夢だった。』


私はほっと一息ついた。


『これなら俺もあなたの無意識領域から出られそうです。』

『ああ、そう、よかった。』


相変わらず何言ってんのかわからないけど。


『…俺の持論ですけど。』

『うん?』

『心が綺麗な人は、無意識領域も綺麗なんです。』

『……』

『だから…あなたの心もとても綺麗だと思います。』


私は藤の花を見上げた。


『…でも…私の心は汚くて醜いよ。わがままばかりだし、自分のことしか考えられないし。』

『他人のことだけを考えて生きる者の心が綺麗なわけではないぞ?』


急に口調が変わったので陽明くんに視線を下ろすと、そこには私の知る陽明くんはいなかった。

彼は…豪勢な着物を身にまとい、髪型も違った。


…多分…平安時代の、前世の彼の姿だ。


『己を見つめる者こそ、心の清き者だ。』

『…そういうものなの?』

『さあな。私はそう思うというだけだ。あなたがこの景色を醜いと思えば醜い。美しいと思えば美しいのだ。それと同じように、あなたが自分を肯定できぬのなら、それもまた正しい。

あなたの心も思いも全てもあなたのもの…それを決めるのはあなたでよい。』

『でも…私はわかんないよ』


陽明くんはにこりと笑った。


『自分を理解する必要も無理に決める必要はない。わからないのならわからないで良い。言っただろう、自分のことを見つめるだけで良いのだ。』

『見つめる?』

『そう。あなたはよく自分を見つめていると私は思う。』


陽明くんの目は不思議な輝きを放っていた。爛々と光すぎて、ちょっと怖いくらい。
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