第72章 “本当の記憶”
『じゃあここからは頑張りましょうか。入るのが難しいということは出るのも難しいということ。あなたがこの無意識領域…つまり、自分の夢の中にいることは問題ありませんが、最悪俺は出られなくなる。』
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これ、理解できない私が悪いの?え?意味わからないんだけど。
『頑張るって何を?』
『あなた、最近へんな夢を見ますよね。』
『…まあ、見るけど。』
『じゃあその元をたたないといけない。』
『え?』
『このままじゃあなたがまた壊れるだけだ。悪夢を断ち切りましょう。』
『悪夢…』
……そんなことができるのだろうか。少し離れたところにいる彼に近づこうとした時、また何かが体に当たった。
足に何かがあるみたいで、うまく動けなかった。
『なんかいっぱいものがあるみたい。でも不思議ね。真っ暗なのに、陽明くんの姿ははっきり見えるの。』
『…そうなんですか?』
陽明くんは驚いていた。
『俺はあなたの姿なんて見えませんよ。声が聞こえるだけです。あなたには俺が見えているんですか?』
『え?見えてるよ、だってそこに…』
私が手を伸ばした。確かに陽明くんに触れた。
陽明くんはガッと私の手を掴んだ。離さない、というように。
『これ、あなたですか?』
『え、うん。私の手。』
『………俺からあなたが見えないのは不便なので、このままでもいいですか。』
『あ、手を繋ぐってこと?いいよー。』
ぎゅっと陽明くんの手を繋ぎ、2人で暗闇を歩くことに。
その間にも色々と足元にある何かにぶつかった。その度に、陽明くんは言った。
『触らない方がいいですよ』
彼は何があるのかわかっているようだった。
『見えてるの?』
『いいえ。でも何かくらいはわかります。』
『わかるんだ…』
私はさっぱりわからないのに。
『さんの無意識領域って本当に真っ暗ですよね。』
『なんか気味悪いけど…お先真っ暗ってこと?』
『………』
陽明くんは少し低い声で言った。
『塗りつぶしやがった奴がいるだけだと思うけど』
その声がなんだかとても怖くて、それ以上は何も言えなかった。