第72章 “本当の記憶”
目が覚めると、もう朝だった。
…久しぶりにめっちゃ寝たな。
夢の内容が頭に残っていてぼうっとする。隣を見ると実弥がいて、すうすう寝ていた。
(帰ってきたことに気づかなかったのか)
よほど眠りが深かったんだろうな。
私はフラフラと歩いてまたベランダに出た。
風に当たって頭を起こし、中に戻って朝ごはんだのもろもろの用意を済ませた。
仕事はこの集中できる時間に15分ほどで全て終わらせた。
おはぎのエサを用意して、私はソファーに沈む。
スマホで連絡が来ていないかチェックして、またぼうっとする。
時間になっても実弥が起きてこないので起こし、洗濯を回す。
「……おはよう…」
「おはよう。」
洗濯機のボタンを押したところで実弥が姿を見せた。
その横を通り抜けて、おはぎの様子を見に行く。
「ぎゃあ!またやってる!」
「にゃあにゃあ」
最近のブームなのか、水を飲まずに水皿をひっくり返すことをしょっちゅうやる。…猫って水が嫌いなんじゃないの?なんでこんなことするの??
「あのね。これはおもちゃじゃないんでちゅよ、おはぎたん。お水っていうの限りある資源なんですよ。主に経済的に。」
『これはくるってやればばちゃんって言って面白いんだ。』
「だからおもちゃじゃありません!」
おはぎを非難させて床の水を拭こうとした時。
「うわッ」
うっかり水を踏んでしまい、つるっと体が傾いた。
慌てて受け身を取り、なんとかなったものの。
『おいなんだ今のは。面白そうだな。俺にも教えろ。』
「……遊びじゃなあいいいい…」
ドッドッと心臓がうるさい。
もう、絶対寿命縮んだ。
「…今の何の音……って何事だよ。」
その後、ビチャビチャになった床は実弥がふいてくれた。私は先程のショックが抜けずに半泣きでエグエグ言いながら彼の横でわめいていた。
朝からすみません。