第72章 “本当の記憶”
実弥を送り出し、一息ついたところで私は病院へ。今日は産婦人科の検診だ。
診察ではとんでもないことが判明した。
それに驚いているところに先生から一言。
「赤ちゃんは元気だけど、あなたが元気じゃないわね。」
……そんなことあります???
どうやら脱水と栄養失調を併用して発症していたらしく、そく寝台からの点滴。
全然納得できない。栄養失調?は?あんなに食べてるのに???
「一番の問題はあなた自身が自分の不調に気づいていないことねぇ。」
「……最近すごく元気だったのに…」
「もう、大袈裟なくらいに休んで食べて自分を甘やかすようにしてね。」
見かねた先生がそう言った。
嘘だろ。なんなら旅館で2、3日ゴロゴロダラダラこれ以上ないってくらい休んでいたのに。
点滴が終わると、私はしばらく病院で休んでいくように言われたのでうとうととしていた。
ようやく帰れる、という時にはもう夕方くらいになっていた。
……行きよりも足取りが軽い気がする。
私、具合悪かったの?…全然わからなかった。
家に帰ってからも家事以外は極力休むようにした。ご飯はなるべく量を増やしてみた。
今日が病院だとは実弥に伝えていたのだが仕事が忙しいみたいでやはり帰りは遅い。話をしたかったけれど、またうるさいと言われると私も立ち直れる気がしない…。
いや、実弥はそんなこと言わないか。いかんいかん。疑心暗鬼になってる。
いつもなら実弥の帰りを待っていたのだが、今日はもう待たずに寝ることにした。
__________この声___那由多?
______________なんで、真っ赤なの?
『俺が殺した』
那由多の手には、真っ赤な分厚い本。
足元には血に染まる父。
______違う
違う違う違う
『殺したのは俺なんだ』
________違うよ
____私が
『遅くなってごめんな』
________何?
『俺を………頼む』
_________?
『ごめんな』
____どうして?
『俺はわからない。もうどうしようもないんだ。』
___?
『ああ、でも』
______那由多
『兄弟三人で、一回くらいはご飯食べたかったな』