第71章 何したらいいの?
何も話せないでいると、実弥はまた続けた。
『……って言ったら、お前変なこと考えるだろ』
「……」
『…まあ、いいけどさ。最近は俺も忙しかったし…悪かった。』
「あ、あの」
悪かった、とは言うが謝罪ではない。
……怒ってるんだ。
『明日には帰るんだろ?』
「…うん」
『それは守ってくれよ。』
「うん」
…本当に何も言い返せない。もともと一泊の約束だったのに。
「約束破ってごめんなさい。」
『いいよ。じゃあ俺、これから仕事だから。』
「う、うん」
電話は切れたけれど、なんとも言えない気持ちだ。
……実弥のことはわかっていたつもりだったのに、またやっちゃった。
みんなのところに戻ると、部屋には食事が運ばれていてわいわいと朝ごはんを食べていた。
「あれ、どうしたの暗い顔して。」
「…実弥くん、怒っちゃったんですか?」
「怒ったっていうか…怒らせちゃったというか…」
ズウウウウウンと沈む私にみんなが色々声をかけてくれる。ちまちまと食事を口にしつつ、話を聞いてもらった。
「あらあら…悪いことしちゃったわね。」
「それは確かにそうだワ。僕らも考えなしだった…。」
「すみません、私たちも実弥くんに謝罪しないといけませんね…。」
三人とも眉をひそめていた。
私はなんだか、箸を持つ手が震えてじわじわ涙がたまってきた。
どうしよう。またやっちゃった。自分のことばっかになってた。目の前のことしか考えられないの本当にダメだ。
………どうしていつも間違えちゃうんだろう。
「じゃあ、めちゃくちゃ楽しまないとね」
突然、天晴先輩が私の肩に手を回してそう言った。
「実弥くん怒らせてまであなたはここにいてくれるんだもの。今日は最高に楽しいことしましょう。」
「そして実弥くんへのお土産を爆買いだ〜!」
「僕も選ぶよ」
みんなのポジティブさに思わず笑ってしまった。
「やっちゃったもんはしょうがないんだから、その時できるベストをやればいいのよ。それで怒るやつの方が頭おかしいわ。」
ね?と天晴先輩はウインクをした。私は控えめに頷いた。