第71章 何したらいいの?
私は本題をふっかけた。
「過去の新聞記事はネットで公開されています。そこには1人の男の子が大火傷をしたと書かれていました。この男の子が霧雨那由多さん…ですよね。」
『……』
「この日、いったい何があったんですか。あなたは何を隠しているんですか?」
この時…電話を切って逃げることができただろうに、童男はそれをしなかった。
彼はちゃんと答えてくれた。
『確かに那由多が大火傷をしたことは覚えている。』
「…やっぱり」
『でも隠すようなことはないよ。警察が調べたけど、那由多の火遊びってことになってる。俺もそう思ってる。』
「いいえ。あなたが隠しているのは家のことです。」
『家?』
「那由多さんは、殴る、蹴る、怒鳴る等の仕打ちを親から受けていたと言いいました。でも、本当はどうなんですか?」
童男が再び黙った。
「私は赤ん坊だった頃の記憶を…うっすらとですが、思い出したんです。」
『……』
「あざだらけのあなたと…母親を覚えています。私は母親があんな風に殴られているところは見たことがありません。当時の家ではいったい何が起きていたんですか?」
童男は話さなかった。
しばらく黙ったままだった。
『………答えられない』
「!」
『…君が知らなくていいことだ』
「待ってください、私は…!!」
『買収の件は諦めてくれ。……俺がなんとかする。』
「ふざけんな!!!」
私は怒鳴るついでに机を叩いた。その音が向こうにも聞こえたのか、電話越しに驚きの声が聞こえた。
「……急にこっちにコンタクト取ってきて、その態度はないんじゃないの。」
『……』
「私はあんたらのせいで思い出したくもないこと思い出してるんだ。ちゃんと答えてもらわないと困る。……那由多が私に何かしようとしているのは察しがついてる。いいから吐けるだけ吐け。」
切羽詰まった私は早口で捲し立てた。
……これ以上、霧雨の名前に振り回されるのはごめんだ。さっさと解決して安寧を手に入れてやる。