第71章 何したらいいの?
夢は現実までついては来ない。
はずなのに。
嫌なくらい私は夢の内容を覚えていた。
目を開ければ隣に実弥の背中が見えた。
まだ彼が起きる時間ではない。が、私はすっかり目が覚めてしまった。
「………」
ふらふらと立ち上がり、寝室から出る。…もう朝だから起きていても別に怒られないだろう。
私はいつも彼が言うように上着を羽織り、ベランダに出た。
外に出た途端に風がびゅうっと吹いた。
……気持ちいい。
(決着をつけないと)
下を見下ろすと、朝早くにも働きに出る人たちがちらほら見えた。
(霧雨の因果は私が消してやる…!)
霧雨は、戦国時代に阿国が名乗った。
平安時代から続いた汚れた一族。それが私たち。
鬼と共に生きてきた。血を絶やすこともなく、延々と。
この不思議な力を受け継いできた。
きっと何かを成し遂げるためにこの力はある。
私も、陽明くんも、阿国も、春風さんも……那由多も、童男も。
だから。
だから、私にしかできないことをやるんだ。
また風が吹く。
太陽があたりを照らしていた。
……気持ちのいい朝だなあ。
「いや〜今日も一日頑張れそうだ。」
「おい」
その時、ガラッと背後で窓が開いた。
「あ、起きたの。おはよ〜。」
「おはよう…じゃねえ!!中に入れ!!」
「ふぇ〜?」
なぜか朝イチでバチバチにキレているので逆らわずに従った。
「今日はパンの気分?ご飯の気分?それともガッツリうどんゆがこうか?」
「今日はご飯に…ってちげえよ!!おまっ…お前!!焦っただろうが!!」
「じゃあ昨日の冷やご飯をチンしてあげよう。」
「ありがと…ってそうじゃなくて!!」
台所で冷やご飯の入ったタッパーを片手にぽかんと立ち尽くす。
「何でそんなに髪の毛ぐちゃぐちゃなの?外でも走ってたの?」
「…走ったんだわ…お前が家のどこにもいないから…走ってきたんだわ…!!」
「ふぇ?いたじゃん。ベランダに。」
「気づかなかったんだよおおおおおォォォ!!!」
実弥は唸り声をあげながら私にぎゅうぎゅう抱きついてきた。