第2章 混濁
私は…そうだ。
具合が悪くなって…病院に運ばれて……それから…ええと………。うう、ダメだ。はっきりと思い出せない。
それで、今目が合っているこの人は。実弥。
そうだ。
実弥だ。
何で。
何で何で。
何で忘れていたんだ大切な人なのに大切なことなのに。
あ、あぁ、あ。すっかり忘れてた。そうだ。私、実弥と。
それなのにこんなことになって、死んでしまって…。じゃあここは天国?ううん違う。生きてる。わかるよ。
………生きた?生き返った?
あぁ、どれくらいたったのかな。長い時間がすぎたのはわかる。
こんなに長い間、ずっと大正時代にいたのに。
「」
じんわりと目に涙がたまっていく。目からこぼれてつうっと流れる。
名前を呼んでくれるのが嬉しい。
私は力なく手を動かした。
首も動かす。少ししか動かなかったし、相変わらず顔しか見えない。
涙がまたこぼれた。