第70章 本当に最強?
ちょっと遅めに起きて、リビングのソファーに腰掛けてぼうっとテレビをつけた。
「あ、テレビの前に飯食えよ」
「飯の前にテレビ〜…」
「しょうがねえな…」
実弥の小言も復活しつつあった。…どっちでもいいとは言ったけど、今は控えてくれると嬉しいな。朝の頭に響く……。
実弥はご飯の用意をしながら私が見るテレビをチラチラと覗いていた。
『それでは朝のニュースです。先ほど発表されましたが、株式会社“DRIZZLE”が中高一貫の私立キメツ学園と、霞守神社を買収するとのことです。』
私は飲んでいた水を吹き出すかと思った。
ゲホゲホと盛大にむせる間もアナウンサーはニュースを読み上げていく。
『この買収については今も話し合いが進められているということですが、難航しているようです。霞守神社に多額の融資を行っていた各企業が反対しており……。』
その後も淡々と語られた。
映像に映る那由多の笑顔でどこか不気味に感じられた。
「聞いてねえぞ」
「え?」
「買収の話なんて誰も言ってなかった…」
実弥はぶつぶつと何か呟き、どこかへ電話をかけていた。そしてそれもすぐに終わり、彼はさっさと支度を済ませて上着を羽織った。
「悪い、今から出勤になった」
「あ、うん」
「いいか!?お前絶対外行くんじゃねえぞ!!」
「……」
「返事!」
「はい!!」
実弥は慌ただしく家を出て行った。
「……那由多」
昨日の陽明くんとの会話が思い出される。なんでこう、嫌な予感ばかり当たるかな!!
実弥は童男とは会ったけど、那由多が私の兄とは知らないはずだ。
…学園の方は実弥たちが動き出してるからいいとして。霞守神社の方が心配だ。
でも、買収だからな。反対運動も起きているみたいだし。…そんなに大きな問題じゃないかも?
と思っているうちに、スマホが鳴った。…優鈴か。何の用だろう。
「もしもし〜」
『呑気な声出してんじゃねえ!!!』
「急に怒るじゃん」
『大変なことになったんだ!お前ニュース見てねえのか!!』
「み、見てるよ…買収がどうのこうのでしょ?大変なのはわかるけど、そんな大声出すようなこと…」
『いいから聞けえ!!』
あまりの剣幕に黙り込むしかなかった。その隙に優鈴はペラペラと話し始めたのだった。