第70章 本当に最強?
しかし、そこで気になることが一つ。
「あれ?でも那由多のことは認知したんだよね?」
「…はい。」
「それでもわからないの?」
陽明くんがぐっと拳を握りしめる。
……?
怒っているのだろうか。少し…オーラが怖い。
「はい。わかりません。」
「…」
「霧雨那由多は異様だ。俺たちの誰とも違う。進化の最終形態、俺という存在の成れの果てと言ってもいい。」
陽明くんの目は、ギラリといやな輝きを放っていた。
「霧雨那由多の力は霞守家の力を弾くことだ。」
得体の知れない不安が私を襲った。胸の奥がざわざわと揺れる。
「俺の力が届かない。阿国にも試した。でもダメだった。」
「…那由多は……」
私は、彼を思い出した。
笑っているのに、目の前にいるのに、話しているのに、過去を語るのに、妹との再会なのに。
「感情の波がなかった。目の前にいるということだけが確かで、何も感じなかった。童男は鼻で感情がわかるって言っていたけど、無臭だって言っていた。」
「…ほら、無差別に気配を感じとるあなたでもダメなんです。これはもう、確定でしょう…。」
陽明くんはいつもより低い声で言った。
「霧雨那由多には俺たちの力を封じ込む力が宿っている。」
「……彼の前で、私たちは無力っていうこと?」
「はい。…あの力がどこから来たのかわからない。隔世遺伝なのか…。」
…それで、陽明くんのお母さんはあんなことを言ったのか。
「神様も見放した存在…」
霞守の力を、無力化するもの。
神の力とも言える陽明くんでさえ届かない存在。
「……気をつけた方がいいですよ…とだけ言っておきます。それ以外は何も言えません。」
「…わかったわ。」
「………俺は、あなたの未来は見えます。…最近は断片的に消える時があるんですけど。」
「……」
「大丈夫だと思っています。あなたの未来はよく変わるんです。…でも、未来の映像が断片的に消える時……それは那由多が干渉する未来かもしれません。」
陽明くんは真剣な顔で言った。
「もう兄には会わない方が良いです。」
私は頷いた。
陽明くんはそのあとは何も話さなくなり、どこかへ行ってしまった。