第70章 本当に最強?
二人で出かけようにも遠出はしなかった。
どうも前に私が倒れたことが気になっているらしく、近場で済ませた。
霞守神社がちょうどいいだろうと言うことになったので二人で向かった。敷地面積も散歩コースに適しているし、ちょっとした屋台もあるのでお出かけにはなる。
「あ、ぜんざい売ってる」
「マジか!」
実弥はわかりやすく食いつき、買って来ると言って飛び出した。…まあ、あんこ好きな人ならこういう反応になるよね。
「私はいらないからねー!先行ってるよー!」
「わかったァ!」
一人で取り残されるのも嫌だったので、どこか座る場所を探そうと歩き始めた。しばらく行ったところに休憩所があったので、そこに腰を下ろす。ストーブも置いてあって暖かい。
…私以外には誰もいないのか。
実弥に連絡を入れ、私は一息ついた。
………やーっぱりここは落ち着くなぁ。なんだろう、神社にいるとホッとするんだよね。
守られているような気がする。
…霞守は私のルーツだからかな。
その時、私に近づいてくる気配を感じた。実弥ではない。
神社の砂利を踏み、私の元にやってくるのはこの神社の跡取り息子だった。
「こんにちは。」
「こんにちは、陽明くん。」
「会いたくて来ちゃいました。」
陽明くんは今日も綺麗な笑顔を見せてくれた。…反則級の美形なんだよな。意味わからないくらいイケメンだし。何食べたらこうなるんだろう。
「実弥も来てるんだけど、今ぜんざいを…って、言わなくてもわかるのか。」
「そうですね。…でも、そういうの言葉で聞きたかったりするんです。俺は全部見えるし、その人の心もわかる。でも人間って自分の気持ちをちゃんとは言葉にできないじゃないですか。」
陽明くんの言葉はすごく説得力がある。
それはこの子の持つ力なんだろう。学園の理事長…お館様の声とトーンが似ているんだ。
「その人が選んで、口にする言葉が聞きたいんです。…ああ、この人はこういう言葉でこの感情を表すんだな……とか、そういうのがわかると、けっこう面白いんですよ。」
「へえ…そうなんだ。」
陽明くんって、春風さんとどこか似てるのかな。コミュニケーションが好きっていうか、お話し好きというか。
……私たちって変な力がある分、言葉が減るからなぁ。そういう考え方もあるのか。見習わないとな。