第69章 気づけば花嵐
朝ご飯の時にはもう血は止まったようで、平気そうにしていた。…けど、やっぱり心配だよねぇ。
実弥が朝の用意をしている間に私は血まみれの枕カバーを洗った。冬用の分厚いやつだから中まで染みてなかったのが不幸中の幸い。
…うええ、べっとりついてるから気持ち悪い。
きれいになっていく枕カバー。そして流れていく真っ赤な液体。
じっと見ているとなんだかくらっときた。
ろくに受け身も取れず、私はそのまま壁に頭と背中を打ちつけて撃沈。
ごちんという盛大な音に実弥が飛んでやってくる。私は頭がふわふわしてろくな反応ができなかった。
その後、実弥がなにやら電話をしていた…。
気づけば私は病院のベッドの上にいた。薬を飲まされたがやはり記憶が曖昧。ただ、実弥が心配そうに私を見下ろしていたのはわかった。
「……あれ?なんで仕事行ってないの?」
私が気の抜けた声で言うと、実弥は驚いていた。
「お前、朝に家で倒れたんだ。わからないのか?」
「……ええ〜…鼻血洗ってたんだけど…」
「多分、それが原因じゃない?」
首を動かすと先生もいた。
昔からお世話になっているフレンドリーな人だから、顔を見ただけでなんだかホッとした。
「血を見て気持ち悪くなっちゃったんでしょ。ちゃん、ちょっと無理しすぎてたんじゃない?妊娠すると貧血になることが多いから…。
今回は入院まではしなくてもいいけど、最悪生まれるまで病院にいてもらうことになっちゃうからなるべくゆっくり動くことを心がけてね。」
うっ、そういえば、なんか…。
「頭が痛いです……」
「たんこぶになってたわよ。結構な勢いで倒れた証拠。でもあなたも子供もなに一つ問題ないわ。母子ともに頑丈で良かった。」
「……どうも…」
そのうち頭もはっきりとして、だいぶ回復した。その後、ついでだからとお腹の子の検診を実弥と受けて病院を出た。