第69章 気づけば花嵐
朝から私につきっきりだった実弥はもちろん仕事には行けずじまいだった。
「ごめんね…。私のせいで休んでもらってばっかりで……。」
「別に、お前のせいじゃないだろ…。俺はいいんだよ。理事長も周りの人も理解してくれてる。比較的ホワイトだからな。」
実弥は優しい。けどその分やっぱり申し訳ないなぁ。その日は病院から帰った後に実弥は出勤していった。
はあ、こんなこともうないと良いんだけど…。
とはいえ、まあ世の中そんなに甘くはない。
私の不調は続き、いろんなところに限界が来ていた。
家の掃除はもちろん、ご飯とか仕事とか全部に影響が出てきた。
……だんだん洗濯物は溜まり、埃とか目立つようになり、私は頭を抱えていた。
実弥も仕事だから全部できるわけじゃない。熱も出したし、鼻血が出たこともあったし体調が心配だ。
「おはぎちゃん…」
『なんだ』
「……私、もしかして出産までこんな感じなのかしら」
『知るか』
なんてこっただよ。
…世の中の母親全員尊敬します……。
「と、とにかく…洗濯だけでも」
「しなくていいわァ」
実弥がヒョイっと私をベットに戻した。
「ほらおはぎもこっち来い」
ついでに私の枕元にいたおはぎも抱っこで退かしてしまった。
「いいから休んどけって。」
「…いやだ働く……」
「どんなわがままだよ。せめて『休ませろ』って言えよ。」
「こ…こんなに休んでるの、入院していたとき、以来で…。落ち着かないからいやだぁ。」
「……頼むから寝ててくれ、な?」
と、まあ。実弥が休むように懇願されるほどである。
「こんなゴロゴロするの…私の性に合わない。締め切りに追われるか動けなくなるまで追い込まれるかしないと落ち着かない…!!」
「はいはい、お前は肺呼吸もしてるし声も出してるしちゃんと生きてるし十分追い詰められてる。大丈夫だ。」
実弥はぽんぽんと頭を撫でてそう言った。
…それっぽく言ってるだけで私まじで何もしてねぇ。