第69章 気づけば花嵐
るんるん気分で郵便局まで出かける。
(…もう梅の花が咲いてる)
外の景色は変わりつつあり、季節の移ろいを感じさせる。
……時間が経つのはあっという間だなぁ。
郵便局で無事に原稿を届け終え、ほっとしたところで良さげなカフェを探した。
「あれ?霧雨さんじゃん!」
ふらふら歩いていたら声をかけられた。そこにはスーツを着てピシッとした身なりの……
「あっ、粂野さん!」
「久しぶりー…って、もう霧雨さんじゃないんだったね。実弥の奥さんなんだから!ね、さん。」
「え、えへへ。」
実弥とは前世からの付き合いもある粂野匡近。彼は実弥の大親友であり、今もちょこちょこ会ったりしていると聞いている。
「お仕事…ですかね。今会社はお昼休みですか?」
「うん、さんはお出かけ?」
「仕事の用でそこの郵便局に行っていたので、ついでにどこかカフェでも入ろうかと。」
「じゃあ俺も一緒に行っていい?奢るからさ。実弥の話聞かせてよー!」
というわけで二人でカフェに入り、会話に花を咲かせた。
もちろん共通の話題は実弥のこと。今更彼はくしゃみをしているんじゃないかと言うほどに語り尽くしたのだった。
「へえ、粂野さんの前じゃなんだか子供みたいですね。私が知ってる彼とは全然違う…男の子同士だからかなぁ。」
「ハハッ、確かに。好きな子の前じゃ格好つけてるのかもよ。」
「…ハハッ」
うん。格好いいと思う。
思うけどさ。
3秒に一回はハグしてくるし私が口を開けばなんか怒るしお風呂上がりとか髪の毛ぺったんこだし格好つけてるようには……。
「もしかしたら、粂野さんの前で格好つけてるのかもしれませんよ。」
「…かもねっ。」
まあ、彼のことを偉そうには言えないけれど。
「実弥には結婚祝い渡したけど、さんには何もお祝いできてなかったね。おめでたなんでしょ?一緒にしちゃってごめんだけどまた何か送るよ。今繁忙期で忙しいから直接は難しいんだけど…。」
「えっそんな、全然いいですよ!」
「いやいや、大事なことっしょ。」
粂野さんはにこりと笑った。
「最初はビックリしたけど、俺嬉しんだよ。さんが幸せそうなの。」
「…私?」
彼の言葉に首を傾げた。