第67章 兄たちと妹
私は拗ねた。
それは寝る時になっても相変わらずで実弥に背を向けて横になっていた。
「なァ、もう機嫌直してくれよ」
「………」
「なあって」
実弥に何を言われても振り向かなかった。
「いーくん認めてくれないとヤダ」
「………ダメだ」
「じゃあもう実弥嫌い」
「…俺よりアイドルか、お前は」
ムッとしたように言われた。
…ぐぬぬぬぬぬぬぬ、こいつ。
「じゃあ実弥に好きな芸能人はいないの?」
「いねぇ」
「……かわいいって思う子は?周りにいないの。」
「いねぇ」
「………実弥だって私以外の人と喋るくせに。」
「お前は他の野郎と距離が近い…」
実弥に後ろから抱きしめられて、私は頬を膨らませた。
「私のこと信用してないの」
「信じてるよ。…でも嫌なもんは嫌だ。」
「………意味わかんない。」
私がそう言うと、実弥はまたぎゅうっと私を抱きしめた。
「とにかくアイドルは禁止」
「………うう」
「グッズも没収。録画も消すからな。」
それを聞いてたまらずにポロポロ泣くと、実弥は起き上がって私の涙を拭いてくれた。
「泣くな」
「うう……」
泣いてまで嫌がる私が嫌…なのか、実弥は怒っていたようだ。
私は最後の手段でぎゅっと彼の手を握って上目遣いで実弥を見上げた。ついでに目も潤ませる。
「おねがい……」
むふふ、だいたいこれでいつも許してくれ
「…………」
ない?!
嘘お!?ダメ?!これでも!?ああそう!!じゃあこうなったら!!!!!
「大好きだから…」
「……」
「おねがい」
とことん猫撫で声で懇願。
頼む。これで落ちてくれ。
「………………………………………」
「……ね…?」
わざとらしくコテン、と首を傾ける。
実弥が悔しそうにぐっと歯を噛む仕草を見て、私は心の中でガッツポーズした。