第67章 兄たちと妹
実弥は料理ができたら私の分をテーブルに置いて自分はさっさと別室に引きこもった。
まだお腹も空かないので私は食べなかったが……。
待ってこのアイドル格好良くね???????
え?やばい推せる。かっこいい。待って大学時代の私、どうしてこの魅力に気づかなかった?
慌てて私に布教してくれた友達にメッセージを送ると、秒で返信がきた。
『沼へようこそ』
『右から二番目の人が好きかもしれない』
『いーくんって言うんだよ。覚えて。』
『いーくんか、あっ今ウインクした』
『待って同じ番組見てる?本当にはまるならいーくんグッズあるから譲るよ?』
『マジでありがと』
結局、番組中はこんな感じで友達と語り合っていた。
実弥が皿洗いをしに戻ってきていたけど、あまりにも夢中だったのでまだやりとりを続けていた。
『いーくん格好いいを通り越してかわいい!』
『それな。え、今度ライブ行こうよ。…いや、ライブの前にDVD観よ。全部貸してあげる。』
『えーーーいいの!』
そんな感じで数時間は続いた。
風呂の中でもやりとりは続き、寝る前もまだ語っていた。ソファーに寝転ぶ私はムフフと一人で笑いながら友達と話していた。
その時、くうっとお腹が鳴った。
そういえば…ご飯食べてない。
私は立ち上がって冷蔵庫を覗く。テーブルには実弥の作った料理があったけれど、食べる気にはなれなかった。
「ふん」
……実弥が悪いんだから。