第67章 兄たちと妹
「まさか」
『まさか〜…』
しかし二人とも否定できない。
私は自分の行動を振り返ってみた。いやあ、確かに帰ってきてから兄二人のことばかり話した…?そのせい、なのかな。
「いや、誓ってあんな態度取られるようなことしてない!!!!!」
『……あなたは良い加減、実弥くんの愛の重さに気づいた方がいいですよ。』
「え?何言ってるのかよくわからない…」
『………』
春風さんは少しの沈黙の後、面白そうに話し始めた。
『じゃあこうしましょう。試しにとことん実弥くんを無視してみませんか。』
「え?」
『無視されてるんじゃない。無視してやってるんだ!くらいの気持ちでいたらどうです。頑なに実弥くんにかまわず、飼い猫のおはぎくんや人形…本とか、アイドルとかばかりに夢中になるフリをするんです。』
そう言われて、ちょっと魅力的な提案に思えた。
「おおお!いいかもしれないです!結構むかついてたんで…!!」
『頑張ってください。』
電話を終え、私は早速行動に移った。
学生時代、友達が『布教だ』とか意味のわからないことを言って押し付けてきたアイドルのブロマイドを仕事机の上に飾る。
そしてクマちゃんをソファーに座らせ、その横に私も座る。そうしているうちに自然とおはぎも私のところにやってきた。
そろそろ実弥が帰る頃だな、と思うとおはぎが動いた。よし、帰ってきた。実弥がドアを開けて、テーブルのそばに荷物を置いた。
私はテレビをつける。
机に飾ったブロマイドのアイドルの番組があることをさっき知ったので見ようかと思ったのだが、普段アイドルなんて見ないのに急に見るのは不自然だろう。
適当にチャンネルを回して…適当に興味を持った体を装うことにした。
実弥がガチャガチャと冷蔵庫から食材を出して料理を始めるが、私が完全に無視していた。
実弥は私のお昼ご飯も作っていてくれたけど、なんかもうそれさえイラッときたので食べなかった。私は自分で作ったものを食べた。
冷蔵庫に残る料理を見て手を止めた背中に若干の罪悪感はあったが、私は知らないフリをした。