第66章 愛ゆえに苦しめと
バレないように童男をじっと観察する。
……えっと中学を卒業した時に実家を出たんだよね、この人。その時は私は1歳。今は25歳だから……もうすぐ40代?まあそこら辺…か。
まさか兄とこんなに歳が離れていたとはなぁ。あ、指輪ついてる。結婚してるのかな……。
「…何」
「え?」
「何か?」
はっ、見てたのバレてた。
えーとえーと、どうしよ…。
「あの〜…那由多さんと童男さんってどんな人…なんですかね…」
……はい誤魔化せなかった〜。ていうか本人になんて質問してんだくそか私くそですねはい。どうせ私なんて生きてる価値もないミジンコでカスで存在が地中に埋まってるんだ…。
「俺は…自分のことはできないけど、仕事とか…他人のことならできる。結婚は取引先の子とした。子供は中学生の息子と…今1歳の女の子がいる。」
……え?これもしかして答えてくれてる?
「俺ははっきりものが言えないから会社は基本裏方。コンピューター関係が強くてプログラムとかサーバー管理とかそんなことやってる。家でも奥さんに勝てない。」
「あ、あはは…」
え?!今の笑うところだよね!?笑っていいところだよね!?!?!?
「那由多は俺の一つ上の兄で…」
…もう今となってはこの人の全てがわからない。
「キツイ性格で…見た目のこともあって変な目で見られることが多い。でも本当はけっこう怖がりなんだよ。」
「へ、へぇ…」
「寝る時に電気消せないんだって。」
「あはは」
…今の笑うところですよね???
「那由多は結婚してない。彼女がいたこともないと思う。」
「はあ…」
「何か質問は」
そう言われて、私は咄嗟に聞いてしまった。
「那由多さんって怖い人なんですか?」
「え」
あっ
しまった。つい。
たいして考えもせずに聞いてしまった…!!