第66章 愛ゆえに苦しめと
地下の駐車場に連れて行かれ、ヨウコさんと別れる。
「実弥くんによろしく」
去り際にそう言われて頭を下げた。
………?実弥のこと…あの人に話したっけな。あ、そうか。学校の先生だから知ってるのか。
??結婚したって言ったっけ?まあいいや。
相変わらず不思議な人だな。
ヨウコさんを乗せた那由多の車は一足先に出発した。…あっちはいいよな。募る話とかあるからさ…。
「行こうか」
後ろから童男にそう言われ、ビクッと肩を震わせる。
「はっ、はいただいま」
「……」
童男は私の少し前を歩いていた。
「……もし」
「ひゃい」
「嫌なら、誰かと電話をしたり……会話を録音したり…窓を開けたりして構わない」
そう言われて思わず足が止まる。立ち止まった私を彼は振り返った。
………那由多とはまた違う、特別優しい気配がする。
「……家を知られたくないなら…近くの駅とか、コンビニとかで降ろす…」
「え、と…」
「……まあ…乗って」
気がつけば童男の車の前に来ていた。
「ッ!!…が、外車…!!」
「普通」
「どこが!?」
そこにあったのはペカペカの黒の外車。しかもめっちゃ高いやつ。これ一つ買うだけで私の貯金消えていくんですけど……??
まあ那由多と起業したんなら、金持ちか。そうか。氷雨家といい霞守家といいどうして私の血筋は金持ちが多いんだ。
「後ろ…」
「あ、はい失礼しましゅ」
後部座席に乗るように言われて恐る恐る乗り込んだ。…おお、座り心地が我が家のソファーより良い。なんかいい匂いする。
「住所」
「あ、えーとここに…」
スマホで我が家の地図を見せた。…童男は信頼できる。冨岡族に悪い人はいない!!
「…わかりますか?」
「道には迷わない」
「そ、そうですか」
童男は手早くナビを設定した。
「どこか寄りたいところは」
「ない、です」
「わかった」
そして会話もそこそこにさっさと出発した。