第66章 愛ゆえに苦しめと
はいはいそんなこんなで7日。霞守家の奥さんと一緒に兄の会社に乗り込む…が。
「もこっもこっ」
「……」
「うふふ〜」
先ほどからこのテンションである。いや待て待て状況わかってる??あんたは見知った甥っ子かもしれないけど私はほぼ初対面の兄二人と会わなきゃならんのだよ!!!
「…でかい会社だなぁ。」
「は〜い行きましょ〜」
「あの、心臓に毛が生えすぎてませんか!?」
彼女はグングンと中に進む。そして私がうだうだしている間に会社の受付で社長を呼び出すことまでやってのけた。
私たちは受付の人に案内され、会社のビルの最上階にある会議室に通された。
そこには見知らぬ男が三人。
「……驚いた。」
自称、私の兄の那由多が目を見開く。
「ソウコおばさんじゃないか!」
「まあ〜那由多くん、キラキラになってる〜」
…キラキラってピアスのこと!?
ソウコ…ああ、この人の名前か。
ソウコさんはスキップでもするみたいに中に入り、遠慮なく那由多の手を握った。
「キャアキャア、大きくなってるぅ〜」
「………」
はしゃいでいるのはソウコさんだけだった。
「ちゃん、あなたのお兄ちゃんたちですよぉ」
「…は、はあ…」
「那由多くん…は会ったことあるのよね!」
那由多は前回と同じくピアスじゃらじゃら。タトゥーも変わらない。見た目で判断しちゃダメだけど、社長には見えない…。
ええと、それで横にいるのが…
「こちらはオグナくん!」
首から下げている社員証…まあつまり名札をじっと見つめる。……『霧雨
童男』と書かれていた。…珍しい名前。
私にペコリと頭を下げるだけで発言はなかった。…雰囲気は冨岡くんみたいだな。
「こんなだけど、二人とも乙女座よ!!!」
「その情報開示今じゃないとダメなんですか!?」
思わずいつものように突っ込んでしまった。あああああ頼りになるようなならないような。