第66章 愛ゆえに苦しめと
その後食べたクリームパスタは美味しかったし、内緒で買った漫画は面白かった。
ただ、ポケットに入ったあの名刺だけが私を悩ませた。
散々悩んだ挙句、私は陽明くんと阿国の母親を頼ることにした。
恐らく、あの人が母について一番詳しい。そうなると、兄のこともしっているかもしれない。
春風さんの母に聞こうとも思ったが…春風さんに連絡すると、どうやら両親揃って方々を飛び回っているらしく、正月なのに帰って来ていないという。
おかげで春風さんが寂しがっていた…今度会いに行こう。
霞守神社は正月のため初詣の対応で大忙しだが、話すくらいならいいと言われたので明日行くことにした。
「友達と初詣行ってくる!」
実弥には適当を言っておいた。
「じゃあ送って行くよ。霞守神社か?」
「え!?あ、別に、散歩がてらって感じだからさ…。」
「遠慮すんなって。」
「いやダナー!久しぶりの友達との再会なんだからー!!」
「そうかァ?」
実弥をなんとか振り切って、次の日に霞守神社へ。
よし、なるべく怪しまれないうちに…。
ってすごい人だな!まあここら辺じゃ一番大きな神社だし、ちょっとした観光名所ってこともあるだろうな。
「ちゃーん」
「あ、おはようございます!」
正月だからか、いつもの風変わりな格好ではなくちゃんとした装束を身にまとっていた。
「じゃあ中においで。」
「お邪魔します…」
従業員の休憩室に通され、私と彼女は向き合って座った。暖かいお茶も出してくれて、急に会いに来たのに厚待遇でなんだか申し訳なくなってしまった。
「で、何か私に聞きたいことがあるのよね?」
「あ…はい。えっと…急にこんなことを聞いて申し訳ないのですが。」
恐る恐る、慎重に尋ねた。
「私に…兄って…」
「いるわよー二人!!」
彼女は指をニ本立てて、鼻歌でも歌うようににこりと笑った。
「マジか」
「え?アレェ?知らなかったの〜?」
こてんと首を傾げる。…かわいいなこの人。
「んも〜お姉さんったら」
「その…先日、私の兄だと言う人に会いまして…那由多?って名前で…」
「まあ!ナユタく〜ん!会ったことあるのよ。もうずっと小さい時だけどね!」
その後…彼女は身構えていたのが馬鹿馬鹿しく思えるほど、あっさりと全部話してくれた。