第64章 恨みは吐き出すもの
お年玉の入ったポチ袋。
うん、まあ、私もあげないといけないかなって包んできたんだよね。
「玄弥くんの分もある…」
「えー!姉ちゃんマジで!?やさしー!!!」
玄弥くんが踊り出す勢いで叫んだ。そして下の子たちもキャアキャア叫ぶ。…おお、お年玉ってこんなに嬉しいもん???
「私も数学苦手だったから気持ちわかるよ。」
「姉ちゃん…」
うっ、と声をあげて玄弥くんが涙ぐむ。え?そんなに??
「だっ大丈夫だよ!!!私、大学受験に数学使ってないから!!元気出して!?」
「は美大だからだろうが!!変なこと吹き込むな!!」
「勉強しなくても未来は明るい!ガンバッテネ!!」
「!!!!!!」
でもさ。
「勉強が全てじゃないよお。できないからって追い込まなくてもいいよね〜。怖いお兄ちゃんだね〜。はーい、玄弥くん。これで好きなもの買ってね〜。」
「ありがとう姉ちゃん!」
「おいこら二人で花咲かせてんじゃねえぞ」
実弥が怖い形相でうなる。足元にいたおはぎがその騒がしさに飛び起きるくらいには。
「まあまあ、実弥もそんなに怒らないの。」
「だが…玄弥の成績はよ……」
見かねたおばさんが実弥をなだめるも、彼は困ったように言った。
「…玄弥くんのことはよくわからないけど、数学が苦手な分はきっと何かでカバーできるんじゃない。」
「そうだそうだ。姉ちゃんの言う通りだ。」
「お前はどの目線でものを言ってんだ玄弥ァ」
うーん、実弥は玄弥くんのために言ってるみたいだけど、あんなに怒ってたら関係がぎくしゃくしちゃうんじゃ…
でも、他人の家の事情だから私が言いすぎても…。
「大丈夫よね。今年は頑張るよね。」
フォローするようににこりと笑うと、玄弥くんは何故か頬を赤らめた。
「うん、俺頑張る。」
「がんばれがんばれ。応援してるよ〜。」
すると何故か実弥がブチギレた。
「に言われて頑張ってるんじゃねえ!最初からそのやる気を見せろ!!」
「ファ!?勉強の応援したのに!?今のどこに怒る要素が!?」
理不尽に怒る実弥を見て、おばさんはなんだか察したようにクスクス笑っていた。何故か怒られた私はひとまずお年玉をみんなに配っておいた。