第64章 恨みは吐き出すもの
おはぎはそれから実弥にべったりだった。子供たちが近づくとバタバタと暴れたが、実弥が撫でるとぴたりと大人しくなった。
『もう嫌だ帰りたい』
そんなことを言ってはにゃんにゃん鳴いていた。
「いいなぁ。おはぎモテモテ。」
「よくねぇよ。コイツらおもちゃかなんかだと思ってんだ。」
実弥がはあ、とため息をつく。その様子におもわず吹き出した。
「君はいつも周りに振り回されるね。」
「自覚があるなら少しは大人しくしててくれよ。」
「は?こんな清楚女子他にいないわ。」
「…鏡見てくるか?」
でもムカついたので軽くほっぺつねっといた。
「怒るなよ、事実だろ。」
「オッケー表出ろ3秒で天国見せてやる」
少しバチっと火花が散ったところでお互いにハッとする。
視線を感じたのでそちらに顔を向けると、一番下の就也くんがじっと私たちを見ていたのだ。
「夫婦喧嘩?離婚するの?」
「……どこでそんな言葉覚えてきたァ」
実弥がピクピクとこめかみをふるわせる。
「ほら、お年玉やるから向こうでみんなと遊んでこい。」
「お年玉ー!!」
就也くんがゲームをしているみんなの方へドタドタと走っていく。
その後ろ姿を見ていると、実弥が深いため息をついた。
「……正月くらい仲良くしよっか」
「毎日仲良くしようぜ」
微笑ましい光景ににやけ笑いが止まらない。
いやあ、実弥がお兄ちゃんだ。お兄ちゃんしてる。全世界お兄ちゃんランキング堂々の二位だね。一位は炭治郎くんだけど。あの子はもう絶対的王者でしょ。
「就也だけずるいー!実弥兄ちゃん、私にもお年玉!!」
「俺も!」
「俺もー」
やたらと野太い声がしたと思えば玄弥くんだ。スマホでぽちぽちやっていたのにお年玉となると口を挟んできた。わああ高校生だあ。
「じゃあ並べ。玄弥以外。」
「は!?」
「うるせええェ。俺のテストで赤点取りやがったバカにはお年玉なしだ。」
玄弥くんはぐうの音も出ないらしい。
……え、待ってそれだと困る。
「あの…」
「ん?」
実弥が下の子達に順番にお年玉あげる中、私はカバンから取り出した。