第64章 恨みは吐き出すもの
お昼前になると、実弥の運転する車に乗って二人で不死川家へ。
車内はずっと無言。さあ…緊張の一瞬ですよ。
なんせ結婚の挨拶を言い逃げする形で帰省して以来ですからね!!
だがしかし私に覚悟はできている。俗に言う嫁いびりなるものがあったとて私は一ミリも気にしません。生きていればそれでいいじゃない。
実弥もなんかピリついてるし、ちょっと怖いなぁ。
帰省ということでおはぎも一緒についてきてもらったけど、私たちの様子を見て鼻で笑うような態度だった。
『いつもやかましい奴らがずいぶん大人しいじゃないか。』
いつもいつもうるさくてすみません。
と、まあそんな嫌な空気のまま不死川家に到着。…私のおばあちゃんとおじいちゃんも家にいるんだよね。うん。家から大量の気配を感じる…。
「扉開いた瞬間に土下座とかした方がいいかな」
「土下座するなら俺だろ」
二人でそんなことを話しつつ、実弥が扉を開けた。
まず一番に見えたのは玄関にある大量の靴。おお、さすが大家族不死川家。
「ただいまァ」
「お、お邪魔しまぁす」
実弥の次に私も声を出す。
すると、家の中からドタドタと複数の足音が聞こえてきた。
「実弥兄ちゃ〜ん!!!」
「お兄ちゃんお帰り!」
「兄ちゃんだぁー!!」
はいかわいい。
全世界かわいいもの選手権堂々の第一位です。
実弥の元に駆け寄る弟妹たち。寿美ちゃん、貞子ちゃん、弘くん、ことくん、就也くん………。
「兄ちゃん逃げねえから落ち着け。みんな元気だったかァ。」
そして弟妹たちと戯れる実弥が全正解尊いもの選手権堂々の第一位。
上は中学生、下は幼稚園の年の差兄弟。尊い。
あまりのかわいさと尊さに悶絶していると、奥から玄弥くんが出てきた。
「こら、お前ら。二人が家の中に入れないだろ。」
玄弥くんが一番下の就也くんの手を引く。ふぐうっ。あんなに小さかった玄弥くんがお兄ちゃんしてる…!!
とりあえずニコニコしてその様子を見ていた。よかった。感情が表情に出てたらここで泣いてたわ。