第64章 恨みは吐き出すもの
お風呂上がりも実弥に監視され、着込め着込めと言われた。実弥監修の元もふもふに身を包むと、暖かいを通り越して暑いくらいだった。
「あっテメェ暖房消しやがったな。」
「あ、暑いし勿体無いし…」
「阿呆。ウチはおはぎもいるんだぞ。」
「おはぎ用にヒーターつけてるよ。」
「あれはお前用だ。」
と、まあ始終こんな感じ。
ぬくぬくの中、二人で年越しそばを用意して、後片付けを済ませた。お腹もいっぱいになって実弥がテレビをつけたところで私は仕事用の椅子に腰掛けた。
「…何してんだァ?」
「絵を描いている」
「パソコンの電源ここかァ?」
「パソコンに触れたら許さないよ」
怒気を含んで言うと、実弥はピタリと動きを止めた。
「…なんだよォ、大晦日だぞ。仕事なんてしなくても……。」
「え、毎年こうしてやってたじゃん。う〜ん、ここの線画が納得できないな。」
ゴリゴリ音を立ててペンを走らせる。自分の思う通りに絵が描けるのは本当に楽しい。
妊娠してから仕事の量は減らすに減らした。今では全盛期の10分の1にも満たない仕事量だ。
1日に3つ絵を描けば頑張った方で、後はゴロゴロ休んだりしている。
今までと同じ量の依頼がくるもんだから断るだけで一苦労よ。ぐぬぬぬぬぬ。事情を説明したらみんなわかってくれたけどね!あーここまでくるのまじで大変だった!!
資料を漁ったりしつつ絵を描き進め、2時間ほどで全部終わった。
ははっ、納期ギリギリのくせはいつになっても治らねえなこりゃ。
うんと伸びをしてあくびをこぼす。
『おい』
「あ、おはぎじゃない。どうしたの。」
いつの間にか足元にいたおはぎを抱き上げてよしよしと撫でる。
『男が寝転んでて面白くない。遊べ。』
「はいはい。」
と言うことは実弥は寝たのだろうか。リビングに姿が見えない。…気配からして寝室だな。夜の10時半だし、まだ早い時間なんだけどな。
猫じゃらしを振り回しているうちにおはぎも眠くなったのかそのうち動きを止めた。
『ねむい』
「もう寝たらいいわ」
『次起きてもお前はいるか?』
「当たり前だよ。ほら、一緒に寝ようね。」
しばらく抱っこしていると、おはぎが眠ったので私も寝室に向かった。
そこで実弥は先にすうすうと寝ていたので容赦なくクマを間に挟んで私も横になった。