第64章 恨みは吐き出すもの
私の質問に答えたのは縁壱さんだった。
「加賀美さんとは一緒に孤児院で働かせていただいています」
「孤児院…」
…ああ、確か、あの事件の後にアリスちゃんは自分が育った孤児院で働いてるって聞いたな。
そこに縁壱さんもつとめている…ってこと?
「まあ、私たち同僚ってことよ。とは言っても職員としては縁壱さんの方がずっと先輩。」
「……そうは言っても…あなたの方が子供によく好かれている。」
「…今、その情報はいらないと思うわ。」
意外なコンビだと思ったが、案外馬があっているらしい。激しいアリスちゃんと静かな縁壱さん。
「今日はデートではなく仕事です。」
「そう。年末って物入りだからね。施設は年中無休だから。」
「…そっかぁ。忙しいのね。」
あわよくばどこかでお茶でも、と思ったがそうはいかないらしい。
「また会おうね?」
「…ええ。」
アリスちゃんはそこでやっと笑った。
「それじゃあ、もう行くわ。元気な赤ちゃん産むのよ。良いお年を。」
「あ、うん。ありがと。」
「…良いお年を。」
二人と別れ、私たちは家に帰った。
家に帰るとおはぎが待ちぶせしていて、撫でろ撫でろと何度も言ってきた。
それに応えてよしよししていると、実弥がどすどす歩いて私たちに近づいてきた。
「お前はまた薄着しやがってえええェェェ!!!」
「えっえっ」
「せっかく買ったんだから着ろ」
実弥にすごまれて彼が手に持っていたモコモコのアウターに袖を通した。途端に一気にぬくぬく感が私を包み込んだ。
「モフッモフッ」
「なんだよ」
「暑い」
「知るか」
ええ、なんで???
このままだと本当に私が歩いた時の効果音がモフッモフッてなるよ??うう、こんなに過保護にならなくても良いのに…。