第64章 恨みは吐き出すもの
アリスちゃんに実弥は少し警戒しているようだった。
それにかまわず私は彼女との再会を喜んだ。
「わぁ〜!!超超超久しぶり〜!!10年ぶり!?会いたかったぁー!!!」
アリスちゃんの手を握ってブンブンと振り回す。
思わず興奮が行動に出てしまって、すぐにやめた。
「あ…会いたかったって、あなた私が何をしたか忘れたの!?」
「?忘れてないよ。アリスちゃんとの時間は全部大切な思い出!」
「私はあなたを傷つけたのよ!!」
アリスちゃんは今にも泣き出しどうな顔で言った。
「さあ……そんなつまらないことは忘れちゃった。」
それと反対に、私は笑った。
アリスちゃんはぐっと言葉を飲み込む。
…本当は全部覚えてる。
でもね。
本当に恨んでたら、私はあなたを訴えてた。
アリスちゃんは童磨くんのために悪人になろうとした。優しい言葉で私を騙して、あの家に私を置いた。
けれど全てが嘘なわけではない。
アリスちゃんは私の友達。正真正銘、それは偽りのないこと。
あの事件で一番の功労者はアリスちゃんだ。アリスちゃんは全員を守った。童磨くんも、私も。
だから恨みも憎しみもない。今も私の友達。
「が言うんだから間違い無いだろ。」
「…アンタまで」
アリスちゃんはふいっと顔を背けた。ゴシゴシと目を擦る様子に、私は実弥を顔を見合わせて笑い合った。
「…あの」
その時、一人取り残されていた縁壱さんが声を上げた。
「あ…ごめんなさいね、縁壱さん。私とちゃんは高校が一緒なの。ちょっとまあ…嫌なことがあってね。」
「お久しぶりです縁壱さん!」
「お久しぶりです、不死川さん、さん。」
「って知り合いなの!?」
とりあえず以前お会いしたことがあることを伝えた。
するとアリスちゃんはひどく驚いていた。
「驚いたわ。本当に世界って広いようで狭いんだもの。」
「ていうか私もびっくりだよ。アリスちゃんこそどうして縁壱さんと一緒にいるの?デート…?」
「違うわよ。縁壱さんはご結婚されているのよ。仕事よ仕事。」
ああ、そっか。初めて会った時も公園で子供を遊ばせていたよね。奥さんの顔も私は見たことがあるし。