第63章 馬鹿の失敗談
私の不審な挙動を実弥が見逃すわけがなく、彼はハッとした。
「…まさか」
「………」
「お前のデザインか」
………はい秒でバレた〜
最悪だ。サプライズのタイミングはケーキの後ってネットで調べて、準備バッチリだったのに。
こんなところでボロが出るとは。
「……いや、まあ私が選んだし!?私のデザインといっても過言では…!!」
ぶんぶんと両手を振り回すと、実弥はガシッと私の手を掴んだ。
「お前、なんで指怪我してるんだ?」
「うっ」
こんのやろう目が鋭い。
私の右手の人差し指には絆創膏が巻かれていた。
実弥はハンカチと私を交互に身比べる。
「作ったのか」
「……」
「お前がこれ作ったのか」
私は観念して頷いた。
沈黙が痛くて、しばらくつまらない言い訳をぶつぶつと呟いた。
「いや、だって、お店にいいのなくて!でもちゃんとしたのあげたくて、手芸屋さんの人に手伝ってもらってさぁ!一からデザインして一生懸命やってみたけど、結局うまくいかなくって…!!
何回もやり直して、それ本当に、5回目とかでやっとうまくいったやつで!縫い目もあらいし、上手じゃないんだもん!!」
真っ赤になって早口で捲し立てる私に、実弥がふはっと吹き出した。
笑われたことでさらに私の顔が赤くなる。
「恥ずかしいから、言いたくなかったのに〜…!!」
「何も恥ずかしくねえよ。」
「だって、ぜんぜん上手じゃないの。手作りにしようって決めたけど、私、不器用で…。」
「そんなことねぇ、売り物みたいじゃねえか。……ありがとなァ。」
実弥は手を伸ばして私の頭を撫でた。
子供みたいで恥ずかしかったけど、ぐっと我慢した。
「一生飾る。額縁買わねえとな。」
「何て?」
「絶対使わねえ。毎日眺める。」
「何て?え、何て???」
なんだかおかしい気がしたが、実弥が嬉しそうにハンカチを眺める姿を見てまあいいかと考え直した。