第63章 馬鹿の失敗談
おはぎが落ち着いてからまた食事に戻り、デザートには実弥が買ってくれたケーキを食べた。
「で、今日は何しに外に出てたんだよ。」
お皿が空になった瞬間に実弥がこう聞いてきた。
待ってましたと言わんばかりに私は実弥に隠し持っていたものを渡した。
「はい!これあげる!!」
「………あ?」
実弥はポカンとしていた。
よし。これぞサプライズ。大成功。
…なんか違う気がするけど。
「クリスマスプレゼント…ではなく!君の誕生日プレゼント!!」
「た、誕生日?」
「遅れてしまいましたが…良い一年をお過ごしくださいまし」
深々と頭を下げてそれを差し出す。
ラッピングされたプレゼントを見て実弥は戸惑っていた。
「……そういやぁ、過ぎてたな…」
「え?」
「忘れてた」
ガシガシと髪をかく姿がどこか気恥ずかしそうだった。
「え?忘れてた?」
「…毎年実家に帰ってたけど、今年は帰らなかったからなぁ。そうか。俺26歳か。」
うそ?実弥にしては珍しい物忘れだな。
「学校の先生なら生徒に祝われたりしないの?」
「誕生日なんて生徒に教えてねえよ。」
…何てドライな先生だ。
ていうか誕生日を忘れてたの私だけじゃなくて、実弥本人もだったんだ。そりゃ何事もなくその日が終わっちゃうはずだよ。
「これ開けていいか?」
「いいよ」
実弥はソワソワしながらラップングを解いた。
中から出てきたのは青地のハンカチ。輪郭にそうように葉の刺繍と、角の一つにワンポイントとして赤い花の刺繍がある。
「ありがとう。使わせてもらう。」
実弥は嬉しそうに花の刺繍をなぞった。
「喜んでもらえたみたいでよかった。」
「珍しいデザインだな。この青色がメインで花があるところとかお前の絵みたいだ。」
「そっ、そう?」
そう言われてちょっとぎくっとした。