第63章 馬鹿の失敗談
そのまま私は食事に戻ってもよかったけど、ずっとそばにいた。
「…今日は機嫌悪いのか?」
実弥もひとまずご飯を切り上げておはぎと私の元に近より、私の隣にしゃがみ込んだ。
「ううん、違うの。あのね。」
「ん?」
私は実弥の耳にこそっと囁いた。
「ヤキモチみたい」
「……?」
実弥の耳から口をはなし、戸惑うその横顔ににこりと微笑んだ。
「私たち、おはぎ中心の生活だったじゃない?それが変わったから、寂しくなったのよ。」
今、この家はお腹の子を中心に回っている。
だからかおはぎには最近かまってあげることができなかった。
それに、私はおはぎの言葉がわかるものだから、抱きしめてあげたり、撫でてあげるのも全部おはぎに要求されてからになってしまっていたのだ。
「……可哀想なことしちゃった。」
隣の実弥の肩にそっと寄りかかると、彼は静かに頷いた。
「そうだな」
おはぎは餌に夢中でこちらには見向きもしない。
食べ終わったらもうこちらのことなどお構いなしで、ソファの上でぺろぺろと前足を舐めている。
「…ふふ」
「何だよ」
「いや、実弥みたいだなって」
「あ?」
ずいぶん不服そうだったが、私は撤回するつもりはなかった。
寂しがりやというか、構わないと拗ねるところは本当にそっくり。
「キャットタワーとか買わないといけないかもね」
「……そうだな」
おはぎは寄り添う私たちを見て、また少し唸った。
『寒い。入れろ。』
短く鳴いて、私たちの間にすっぽりと挟まった。
こうしてみんなで密着するのは久しぶりな気がして、すごく幸せって感じだった。