第62章 何も知らないで
頭痛と耳鳴りのせいでダウンしてしまった私はベッドに沈んだ。私の枕元ではおはぎが大人しく座っていて、そばにいてくれた。
『お前はいつも具合が悪いな』
「……嫌な体質が染み付いた…」
未来予知というか、嫌なことだけは事前に察知できるようになった。しかし痛みを伴うので、なかなかにキツい。
…春風さんもこんな感じらしい。何か未来が見えるときは、凄まじい痛みがあるそう。もう慣れたと言っていたので、きっと私も慣れるだろうけど。
「………ッ」
『大丈夫か?』
あれ、今、何か見えたような。
……おはぎと…実弥…?
実弥がおはぎを抱っこしてる。背景からして…ああ、きっとこの家だ。
ザザッと、テレビの砂嵐のようなものがその景色をかき消した。
次の瞬間、そこには家の壁しか映っていなかった。
あれ?実弥とおはぎ、いなくなった。
…いなくなる?
何だろう。
映像はまだ続いていた。ザザッとまた砂嵐が走った。
次は家さえ映っていなかった。
何もなかった。
私の目には、ただ、暗い世界が映っていた___
気配を感じて目を覚ました。
ハッとして起き上がったが、頭痛がひどい。思わず頭を抱えてまたベッドに体を沈めた。
おはぎは私の枕元で丸くなって眠っていた。
……なんだったんだろうか。
ていうか、私はいったいいつから寝てたんだろう。
家の中の気配を探るも、実弥は家にいないようだった。
……ちょっと不安だな。
頭痛で起き上がれないため私はスマホで電話をかけようとしたが、その時玄関から音が聞こえた。
いつもなら寝ていてもおはぎは実弥のお出迎えに行くのに、今日はすうすう眠っていた。
「ただいま」
出迎えがないことに異常を感じたのか、実弥の不安げな声が聞こえた。