第62章 何も知らないで
追いかけようと私も外に出たが、そこに実弥の姿はなく。
…あああああもう!!
アイツこんな寒い中どこに行ったのよ!!
こうなったら先手必勝!!
私は無惨の事務所に大慌てで電話をかけた。
『もしもし、こちら鬼舞辻無惨の「巌勝!!!!!」』
玄関先で喚いていたらお隣さんに怪しまれる。玄関の扉を閉めながら電話の向こうの彼の名前を呼んだ。
『なんだか。俺はもう産婦人科には行かんぞ。』
「ちっげえよ!!!」
『ではなんだ。ろくでもないことなら断るぞ。』
「私の生死に関わる。いいかよく聞け。」
『良いだろう。』
なんでコイツこんなに上からなんだ。まあ私より上なんだけど。
「多分…いや、100%これから実弥がお前に電話をかける。」
『……は?』
「何を聞かれても、何を言われても、お前が実弥に告げることは一つだ。『わかりません』、だ。良いか。」
「………夫婦喧嘩に私を巻き込むな。」
「違う!断じて!!」
『……いったい何をそんなに隠そうとしているんだ。』
「知られたくないことくらい私にもあるって!!」
思わずムキになってそう答えてしまった。
だってそうだろ。どうして無惨とどうこうあったことを実弥に知られないといけないんだ。
現段階では大して伝わってないみたいだからこのまま有耶無耶にして終わらせたい…!だから実弥が巌勝に事実確認をする前に先手を打ったと言うことだ。
『まあ頭の隅には留めておいてやろう。』
「おいーー!約束してくれよ頼むよぅ!!」
『決定権は私にある。以上だ。』
ブツッと音がして電話は切れた。
もう一度かけ直そうかと思ったが、巌勝のことだ。どうせもう相手にしてくれないだろう。
これは祈るしかない。
しかし、嫌な予感を確信づけるように頭痛と耳鳴りが私を襲った。
こういう痛みがある時は決まって嫌なことが起きるんだ。痛ければ痛いほどとても辛いこと。
立っていられないほど痛かったので、私はベッドに潜り込んだ。