第61章 人間
…それで、まあ、無惨の家に行ってからが一番話しにくいことなんだけど。
「無惨は私は鬼側だと言ったの。確かに…まあ、実際鬼だったから、そうだなあって思って。」
「………チッ」
舌打ちが聞こえた気がしたけど、無視します。
あと人間だろうがとかなんとか言ってるけど、無視します。
「無惨は言う通りにすればみんなには手を出さないって言っていた。気配で嘘じゃないってわかっていたし………あとは…“そういう”展開に、なった。」
実弥は明らかに納得していない顔だ。
私は慌てて説明を加えた。
「いや、あの、えっと…本当に学園にスパイいたんだよ。だからやばいと思って。無惨が現れたことでみんなざわざわしてたし、怖いって感じてる人もいたし、なんとかしなくちゃいけなかったし、放って置けなかったし……。
っていうか、あの日学園に無惨いたことが一番やばいと思う。学園の警護めっちゃガバガバだったし。」
私は悪くありません、というのを全力でアピールしていたのだが、実弥は不機嫌そうな顔のままだった。
「………で?」
「え?」
実弥は隣に座る私にもたれかかった。
「その言い訳はいつまで続くんだ?」
………
本気で怒ってるうううううーーーーーーーーーーー
なんか言葉と態度と感情が全部違うんですけど。え。甘えてきてるのが逆に怖い。
「…私の話は終わったので、もういいです。」
大柄な実弥がもたれてきたとはいえ、体重は全然かけていない。重くもなんともなかった。
「正直、鬼舞辻はクソだって思った。」
「…クソかぁ。」
アリスちゃんのところにいた時、無惨と話した時のことを思い出した。海辺で二人で話した時。
…穏やかな顔をしていたと思う。
「無惨もちゃんと人間だったんだよ」
精神が繋がったから、少しわかる。
人間を殺して喰らい続けた行為は死んでも理解できないけれど。
……ほんの少し、わかるんだ。