第61章 人間
二人の間の空気が詰まった時、実弥が頭を下げた。
「俺が、彼女の頬を叩きました」
その場の空気が凍りつくのを感じた。
「申し訳ございません」
誠心誠意謝っているのが気配でわかる。
「」
「は、はい」
おじいちゃん相手なのに何故か敬語になってしまった。
「今日はもう帰る。タイミングが悪かったね。」
「あ、あぁ…おじいちゃんが気にすることではないし…。」
私がモゴモゴと答えると、おじいちゃんはいつものように微笑んだ。
「たまには顔を見せにくるんだぞ。不死川さんも心配してるんだから。」
おじいちゃんとおばあちゃんは二人揃って仲良く帰っていった。
……おじいちゃん怖えええええーーー…
私は…甘やかされていたと思う。二人の子供じゃなくて孫だったし。怒られることもたまにはあったけど……あそこまで怖いなって思うことはなかった。
「…その、ごめんね…?おじいちゃんたら大袈裟で……」
二人に出した湯呑みやら茶菓子を片付けながら部屋で固まる実弥に声をかけた。
「………私、ちゃんと話すよ。」
「…」
「頭の整理をつけてくるから10分待って。」
「は?」
私は自分の部屋…に行こうとしてやめた。
そうだ。自分の部屋ないんだ。
私はリビングから共同の寝室に入った。
そしてスマホのメモ機能にあの日あったことを書き出し、丁寧にまとめた。後であれを言ってなかったとか言ってまたトラブルになるのは面倒だし、これでいいでしょ。
完璧なカンペを用意し、10分後私は満を持して実弥のまつリビングへ。まだ状況が飲み込めていない彼をソファーに座らせ、その横に私も座った。
「では、私が実は鬼滅学園の学園祭に乗り込んでいたことから話したいと思います。」
「…おい、待て一体これから何が始まるんだ。」
実弥はまだ戸惑っていたが、私は構わずに話を続けた。