第60章 あの日を忘れない
ただ無惨に見抜かれたことがすごくムカつく。
「一度は繋がった身だ。お前のことなどわかる。」
「あーはいはい!ご忠告どうも!!」
「ふん、心配くらいはしてやるぞ?」
「うるさいな!もうあの時のことは忘れろー!!」
私が中指を立てると無惨は親指を下げた。それからは行き場が違うので別れたが、憤りはおさまらなかった。
あいついつか全力で足引っ掛けて転ばせてやる。
と、怒りに震えていたせいで……
実弥が静かなことに気づかなかった。
どんなことでも三秒で忘れることに定評がある私は家に帰る頃にはけろっとしていたのだが。
実弥は家に帰るやいなや、荷物を床に放り投げた。
どん、と大きな音がしてそこで気づいた。
実弥が怒っている。え、と私が驚いているとガシッと私の手を掴んだ。反応できたし振り払えたけれど、一つ心当たりがあったので逃げるのをやめた。
……絶対、無惨だ。
「どういうことだ」
「あ、いや、だから私は仲良くなったっていうか」
「“繋がった”って何だ」
「え、そこ?????」
???????
無惨と仲良くしてたことに怒ったんじゃないの?え???
『一度は繋がった身だ。お前のことなどわかる。』
……どうもこのセリフに怒ってるらしい。
ええ、まあ、これは前世のことで。
まあ〜繋がった?うん。一心同体ではあったよね。
前世。あれは最終決戦の時だ。珠世さんと一緒に私は無惨に吸収された。珠世さんは無惨に取り込まれてしまったが、私は意識を保ち続け、結局は生還した。
まあ…その時に無惨は私の記憶を見ていて、私も無惨の記憶を勝手にのぞいていたということ。
どういう理屈だったのかはわかるはずもないのだが。私たちは無惨の体の中でぐちゃぐちゃになって、一つになった。
意識がシンクロした…と言えば良いのだろうか。
まあ…確かに繋がってたね。
“精神”、がね。