第59章 雪嵐
まあ、今回の優鈴の目当ては実弥だったってことだ。
私は口実で呼び出されたにすぎない。
いつまでも嫌われるままでいたくはなかったのだろう。それか、優しい彼のことだから、嫌われるならいっそ関わりを断とうとしたのかもしれない。
呆れた優しさだ。
「それよりさ、あなたハルナちゃんへのあの態度はどうかと思うけど。」
「うるさいな!もう僕は嫌われたいんだ!!あの子とは友達にもなりたくない。」
優鈴が頬を膨らませて怒る。しかし、本気でそう言ったわけではないらしい。
「もう一回告白される前にクソ野郎を装って嫌われようと?」
「……それも当たり」
私がふふっと笑うと、今度はちょっと怒ったみたいだった。
「何でわかるんだよ。」
「長い付き合いだもの。優鈴だって不思議なくらいに私のこと言い当ててくるじゃない。」
「うるさいな、この超能力人間」
「お互い様でしょ」
その言葉に自分で言いながら吹き出した。
そしてお返しとばかりに言ってきた。
「……君のお腹の子は女の子?」
「わぁ、わかるの?」
それから私はじっと優鈴を見つめた。
「そんなに人のことがわかるなら、ちゃんとハルナちゃんに言葉をあげればいいのに。」
「……お前にはわからないよ。あの子が好きなのは、いい顔をしてる僕なんだ。本性を知れば嫌になるよ。」
「そんなことないと思うなぁ。」
「うるさいなあああああ」
優鈴がガシガシと頭をかく。
どうやら悩んでいるみたい…だけど、この伝わってくる感情は。
「もう恋してるじゃない」
「それが事実が嘘かは置いといて、自分がフッた相手に言うセリフか〜〜〜!!!!!!」
「いいや!もう気づいてるでしょ!?ハルナちゃんのこと好きでしょ!?」
「〜〜〜!!!!!」
優鈴はその時、本気で怒った。
「断じて違う!!!!!!!!!!!!!!」
そのあまりの声の大きさに、ハルナちゃんを送り届けて帰ってきた実弥がインターホンも押さず、勝手に家の中に入ってきた。
「どうした!?何があった!?」
泥棒でも入ったと思ったのか、その勢いがもうすごくて…一瞬で飛んできたものだから、優鈴がまた怒った。
「俺の家で走るな!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私と実弥は、雪が降るその日。
本気で怒る優鈴の恐ろしさを知った。