第59章 雪嵐
実弥がティッシュを貸してくれたのでそれで鼻栓を作った。
鼻栓を入れた私を優鈴がまあ笑う笑う。
その時、道場にピンポーンとインターホンが鳴った。
「…あ。」
「ん?道場なのにインターホン?」
「音が聞こえるように改造した。…ああ、面倒だ。居留守使おー!」
優鈴はバタン、と道場にまた倒れ込んだ。
「それよりも実弥、レアだぞ〜。ほどの美女が鼻栓突っ込んでるの。写真とろ。」
「ええー!やめてよおお!!」
「嫌がることはすんな、優鈴。」
なんて会話をしているうちに、道場の入り口がこんこんと叩かれた。玄関から道場の扉までわざわざ来たらしい。
「……」
優鈴の顔がぴくりとひきつる。
私も気配で誰なのかはわかっていた……。
「あの~…木谷さん、いますか?」
優鈴はそれはもう、深くて長いため息をついた。
「道場には来んなって言っただろ…」
「え、や、その」
そこにいたのはハルナちゃんだった。
「あ、さんと…不死川さん??」
「…ども」
「こんにちは……」
「いや、挨拶とかいいから一体何のようで「しゅ、シュシュシュシュシュガークッキ焼きすぎちゃったから!!余ったら勿体ないから!!持っていけって、親が!!!」」
…優鈴の言葉に被せる勢いで説明してるのが必死でなんだか微笑ましい。
シュガークッキー…ああ、クリスマスに作る甘ったるいやつか。
って、ご丁寧におしゃれなバスケットに入ってるし、見た感じしっかりラッピングされてるし、どう見ても余ったとかじゃない。
「!木谷さん、その顔どうしたんですか!?!?!?」
ハルナちゃんは靴を脱ぎ、一度ペコリと頭を下げて道場に入った。
そして、青あざだらけで道場に座り込む優鈴の元に駆け寄り、膝をついた。
…いや、今気づいたんか。
「えええええ不死川さんもひどい顔!それにさんなんで鼻栓してるんですか!?」
「ノーコメント。ちょっと今日は立て込んでるから帰ってもらっ「私、絆創膏持ってます!!!」」
ハルナちゃんは必死すぎてもはや優鈴の話を聞いていない。
そして小さな小さな可愛い絆創膏を優鈴の顔面に貼ろうとしたが、優鈴も負けちゃいない。
どうにかハルナちゃんの腕を掴み、それを阻止したところでまたため息をついた。