第59章 雪嵐
私が“ぶん投げた”竹刀は、今まさにぶつかり合う二人めがけて飛んでいった。
やばい。
なんも考えずに竹刀ぶん投げてたーーーーー!?
少々パニックになる私をよそに、優鈴が冷静に竹刀をキャッチ。その場面に私がハッとしているうちに、実弥のつき技が華麗に決まり、優鈴の右頬にクリーンヒット。
「ぐっ!!!」
「っ!!ゆうれっ」
私が走り出す前に、実弥が倒れ込む優鈴の体を支えた。優鈴は何が起きたのかわからない、という様子で目をパチクリさせていた。
「……〜〜〜!!!!!!!!」
「い、いや、私は」
「離せやシンダガワ!!俺は男に抱かれる趣味ねえんだよ!!!」
「妙な言い方するんじゃねええええ!!!」
優鈴は顔を真っ赤にして怒鳴り、ガバッと起き上がった。
「このゴミのクズのカスがああああああああああああ!!!!!」
そして私めがけて、私が投げたものと自分が使っていたもの…つまり、二本の竹刀を容赦なく投げてきたのだ。
避けるでもなく、それは私の顔スレスレを通って道場の壁に当たった。パン、とむなしい音を立ててその竹刀は床に落ちた。
「ッ!!てめえええええええ!!!!!」
続いて実弥がキレる。
優鈴の胸ぐらを掴み、容赦なく怒鳴った。
「に何しやがる!!!」
「はあ!?あのアバズレが邪魔しやがったんだろうが!!」
「アバっ…取り消しやがれこの野郎!!!!!」
実弥は竹刀を放り投げ、バカスカと優鈴を殴る。そして優鈴も負けじと拳でやり返した。
怖い。
本気で二人が怒っていた。
どうしようどうしよう。私が、余計なことしたからだ。私のせいだ。
怖い。足が震える。
でも、止めなきゃ。
「やっ、やめてえええええお願いだからもうやめてよおおお」
私はヨタヨタと二人の元へ歩き、半泣きで実弥の背中に抱きついた。