第8章 あの中に
二人でそんな感じでわいわい騒いでいると、足元に気配を感じた。
「…!!おはぎ!!」
かわいいかわいい我が家の天使。
私を見上げてキョトンとしていた。
「…やっぱり忘れちゃった?ごめんね、急にいなくなっちゃって。」
しゃがんで手を伸ばして撫でると気持ちよさそうに目を細めた。青い目に胸が締め付けられる。おはぎは緩やかに尻尾を振っている。
「にゃあ」
「わあ!」
おはぎはぴょん、と私の膝の上に飛び乗ってきた。頬に擦り寄ってぺろぺろと舐めてくる。
「覚えてるの?私のこと?」
ゴロゴロとおはぎの喉がなる。
「〜〜もう、大好きっ!!」
ぎゅうっと抱きつくとまた擦り寄ってくる。
感動のあまり夢中になっておはぎを撫でていると、強い圧力がかかった。
「…実弥?」
「……。」
「素直じゃないなあ。」
私はぎゅっと実弥にも抱きついた。
「実弥もおはぎを可愛がりたかったんだよね?ほら。今ならご機嫌だから顔も舐めてくれるよ。」
「……うん、俺、お前を好きになってよかったわ。」
「えっ!?急に何!?」
実弥は深くて長いため息を吐き出した。
「死んでもバカは変わらねえってよお〜くわかった。」
「え?バカって誰のこと?」
「わかった、鏡持って来る。」
「もしかして私のこと!?怒るよ!?」
なんてことを言いつつ力を緩めてこないので、そのうちおはぎが鬱陶しくなったのかふてぶてしい目を実弥に向けていた。
「何で俺には可愛く甘えてこねえんだよ」
「あんたのこと嫌いだからじゃない?」
と、言ってしまったが最後。また不毛な言い合いが始まって、なんてことのない理由で終わるのだった。