第59章 雪嵐
優鈴はこれまでの厳しい表情とは打って変わって、ふにゃっと笑った。
「まっ、かたくるしーことも良いけどさ、遊ぼうぜ!」
「…遊ぶ?」
「そ!仕事も楽しくなくっちゃ!」
優鈴はパッと立ち上がる。
「行こうよ、フランス!!」
ワクワクした顔で言われた。
五年後…ずいぶん遠くの話だが、悪くないのかもしれない。
うん、宇宙一悪くない。
そんなことを考えていると、声が大きくなったことを不思議に思ったのか実弥が道場に出てきた。
「…あの、嫌でも話が聞こえてくるんスけど。」
「いや元よりお前のこと呼んでねぇし」
優鈴の一言で実弥の怒りゲージが上がるも、ごもっともなのでフォローできない。
「あー、もう何なの?お前は俺の何が気に食わないの?俺が色々鬼殺隊に関与するのがうざい?」
「………」
「いや、単に馬が合わないってだけか。じゃあこうしよう。」
優鈴は道場にある器具庫に入った。そこには書道の道具が入っているはず…だが、そこにアレがあることも知っていた。
中から出てきた優鈴は実弥に竹刀を投げた。
「…何のつもりですか。」
「俺が勝ったら俺を認めろ。お前が負けたら、俺に一切突っかかってくんな。」
「あのー…実弥?優鈴?仲良くてくれない???」
どうやら私の声は届いていないらしい。二人ともピリピリしていて、見ているだけではらはらする。
「嫌われてる自覚はあるけど、こうもあからさまだとムカつくんでね。」
「……俺はただ、あんたの行動が意味不明で不快なだけだ。」
「…ふうん。そう思ってたんだぁー。」
二人の雰囲気は最悪。
合図もなしに二人は竹刀を手に構えた。
「非常に面倒だ。手短にやろう。」
いや、ふっかけたのは優鈴でしょう。
私が呟く前に、二人は勢いよくぶつかった。