第59章 雪嵐
このプロジェクトとやらに参加するには少なくとも二年間は海外にいないといけないらしい。
「…とはいっても今すぐ、じゃないよ。ビザとかいろんな問題もあるし、作品をつくらないとってのもあるし、実行は五年後。」
「五年後…」
「場所はフランス」
「おぉ…行ってみたい」
私は思わずパチパチと手を叩いた。写真集とかテレビでしか見たことがなかったフランス。ぜひこの目で…ていうか、海外すら行ったことない私からすればとてもワクワクする話!
「まあ僕みたいなフッ軽は別にいいけどさ。」
「うんうん」
「お前は家庭があるんだから考えものだね。」
そう言われて、手を叩くのをやめた。
「そろそろ仕事のこともちゃんとしないと…いつまでもフリーランスでやってたらお前また倒れそうだし?いい加減企業か就職かしてちゃんと面倒見てくれるビジネスパートナー見つけなよ。」
「……そ、そんなこと言われても…」
「いいぞ~定職は。休憩時間も金になる。」
「優鈴だって定職についてないでしょ!?」
「は?僕は書道教室の社長してるけど。」
「ええーーーーーーー!?!?!?」
とんでもない事実にひっくり返るかと思った。
「収入は社長業務が7で、作品製作が3とかかな。」
「………しゃ、しゃちょ…」
「雇ってやろうか?広告のデザイン考える人材欲しいし。」
「えーーーーーーーー」
どんどん新たな情報が入ってきて思わず頭を抱えた。ちょっといったん待って欲しい。
「お前なら実績もあるし即日採用。本社には育休も取れるし、託児所があるから子供生まれたあとも安心ダヨ。」
いやウインク決めないで。
「ヤッダー…正社員ってかせげないし、私には合わないよ…!」
「お前が心臓止まるまで働いたのは異常行為だよ。お前にはフリーランスの方があってないの。コツコツ働いて金ためな。」
「うぐっ!言い返せない!!!」
私はわざとらしくオーバーに反応してみせた。
あぁ、言葉の刺が痛い。チクチク突き刺さる…。