第59章 雪嵐
「みんなが死んだのも、お前が鬼になるまで追い込まれたのだって鬼舞辻のせいなんだから。」
確かな怒りがあった。
……私も、そう感じていたこともあった。
「でも理由もあったし…本当に誰が一番悪いのかって、誰のせいなのかはわからないんじゃないかな。」
「あーもう。誰しもお前みたいに心綺麗じゃねえよ。」
「綺麗だと思ったことはないけど。」
「そう言うことじゃないんだよな。」
優鈴は机の上に置いてある煎餅をやけになってかじった。
「まぁ、わかったよ。とりあえず鬼舞辻の悪い部分が証明できないなら援助は受ける。霞守は僕が説得するよ。」
「…わ、私もやろうか?」
「いい。…ヨウ…何とかくんがいるならひどいことにはならないでしょ。」
「陽明くんね???」
「人間の名前ってややこしー」
優鈴は反省した素振りもなくそうぼやいた。
「まぁいいや。お前はシンダガワにも話してないんだろうけど、アイツは気にしてないフリが上手いだけだからせめてアイツにはちゃんと話してやれよ。」
「あー、うん、そうだね」
あの時は、無惨に誘拐まがいなことをされて、神社に来ていた天晴先輩に連れ戻されて…。その後、熱中症で倒れたんだった。
いや、ろくな思い出がないな私。
そういえば、あの時も腹を割ったつもりでいたけど、ぜんぜん話してない。
…気づいてないフリが上手、ね。
優鈴はよく見てるしわかってるんだな。
「じゃあ結論をつけると鎮魂には鬼だろうが何だろうが関わってもらう方向で行く…として。これは解決ね。」
「うんうん。」
「後、まあここからが一番重要なのかもしれないけど。」
優鈴は机にだらんともたれかかり、ランチに誘うように言ってきた。
「海外行かない?」
あまりにもあっさり吐き出されたとんでもない誘いに、私は見事に固まった。