第59章 雪嵐
…何?
何、なに、ナニ…何?????
「近々、霞守神社の鎮魂の方法が改められる。僕ら木谷家はそれに協力するんだ。」
何も答えない私から顔を離し、優鈴はいつもの距離に戻った。
「それで……鬼舞辻は経済援助をすると言い出したんだけど、一応さ、神社も世間体があるから経済援助する人がやばいことやってたらダメなわけよ。
調べてたらまあ出るわ出るわ、お前の誘拐履歴。」
「ああ…でも、まあ、無事だし?」
「ふうん、無事…。」
優鈴はじとっと私を睨んだ。
「正直…かき集めた証拠だけでは微妙なところでさ。お前を自分の家に招いたのか、それとも無理矢理連れ去ったのか。だから、お前が証言してくれないと困るんだよね。」
「……無惨を悪者にしたいってこと?」」
「は?当たり前だろ。鬼殺隊士の鎮魂だぞ。僕は鬼に関わってほしくない。」
その言い分を聞いて、何を言わんとしているのかがだんだん見えてきた。
「鎮魂の儀式に無惨の付け入る隙をなくしたいから、悪事の証拠を暴こうって言いたいのね。」
「そう。」
「…でもなぁ。鬼殺隊の鎮魂に鬼が関わっちゃダメって……。」
「別に僕のわがままではなくて、霞守の主張でもあるんだから。」
どうなんだろうか。鬼も後悔や反省を感じて、関わりたいのではないのだろうか。
「そっか。でも、私からの証言は諦めてほしいかな。」
「だから、お前の証言がないと鬼舞辻を省けないんだってば。」
「無理。だって、私は鬼側だもん。」
手をクロスさせて言うと、優鈴は目をこぼれんばかりに見開いた。
「……えー…ここでそういうこと言う?」
「言うよ。だから鎮魂とやらに関わるのは嫌かな。」
「……まじか。」
優鈴は頭を抱えた。
「それでお前は鬼舞辻を庇うって?」
「庇うっていうか、私は何も気にしてないし。あの出来事があって今があるって思うし?」
「………。」
はあ、と深いため息が道場に響く。
「お前はそれでいいの。」
「いいけど。」
「あんなに、あんなに鬼殺隊に尽くしたお前が、こんなのって」
どこか悲しげな声だった。
その声を聞くと、私まで悲しくなってくる。
「お前が鬼舞辻を許したところで、僕らは誰一人としてアイツを許せないんだよ。」
そして、だんだんと怒りを含んだような口調になった。