第59章 雪嵐
と言うわけで二人で優鈴の家にお邪魔した。
道場は冷え切っていたが、ヒーターやらホットカーペットやらが持ち込まれていて、意外と快適だった。優鈴らしい。
なんなら机があって、お菓子とか用意されていた。
「別についてくるのは構わないけど、僕らの話に混じっていいとは言ってないよ。」
書道の仕事中だったのか、墨の飛び散った袴姿の優鈴が実弥を睨んだ。…どうやら、邪魔だと言いたいらしい。
「じゃあ、道場の外にいます。」
「正気?寒いよ?今日は雪が積もってるんだからやめとけよ。リビングのこたつに入ってたらいいよ。」
「………」
実弥は不服そうだった。そして譲ることはなく、道場の扉の外で待つと言い張った。
「……そんなに僕、信頼ない?」
優鈴はため息をついた。
「じゃあ、道場の控え室にいなよ。そこにも暖房器具あるから。ただし、僕たちの会話に耳傾けないでよ。」
「……わかりました。」
実弥は渋々と言うように案内された控え室に行った。
「じゃあ、なるべく静かに話そう。」
優鈴はホットカーペットの上に腰を下ろしたので、私も隣に座った。
「今から、電話でもできないような話をするわけだけど…。まあ、とりあえずは久しぶり。元気そうで何より。」
「そうだね。久しぶり。…優鈴こそ、怪我はもういいの?」
「別に。ああ、ちなみに全員完全回復したから。前世じゃ斬り刻まれたり体に風穴開けられたりした人間の集まりだからねぇ。
たかだか突き落とされたり、刺されたり、潰されたくらいでどうってことないよ。」
「“ぐらい”とは?????」
「よく言うよ。生きるか死ぬかでしか物事判断しないくせに。」
優鈴は机の上に置いてあった煎餅をぼりぼりと食べた。
「てか、一番の重傷者お前ね。左腕はどうなの。」
「ああ…ちょっと動きが悪いけど、ほとんど元通り。」
「そう。」
優鈴はため息をついた。
はあ、とそれはそれは深いもので。
「それで、まあ、本題に入るよ。」
「うん。」
優鈴は突如、ずいっと私に顔を近づけた。
「え?何?何?近いよ…」
とっても真剣な顔で、優鈴は口にした。
「お前、鬼舞辻に何された?」
そのセリフに私はポカンとして、何も返事ができなかった。